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み ん な 元 気 に な る 絵 本

ワンガリ・マータイさんとケニアの木々

ワンガリ・マータイさんとケニアの木々表紙絵  「お母さん、桜、見た?」「見たよ。松川の桜は早いね」「違う違う、うちの桜だよ」「うちのー?」
 毎朝JRの時刻に合わせて家を飛び出す私には、自宅の桜を観察する余裕がありません。おっとり型の長女が言うには、「去年は虫にやられて2輪しか咲かなかったけど、今年は満開になったんだよ。知らんかった?」 はい、ごめん。見上げれば、商店街のデコレーション風ではありますが、ひと枝にびっしりついているのは、まぎれもなく桜の花。もう咲かないのではと心配していた長女は大喜びです。
 たった1本の木にも確かな存在感があります。それが3000万本だったらどうでしょう。あるとないとではそこに生き物が住めるか否かの問題になってきます。それを実証したのが、今回の絵本の主人公ワンガリ・マータイさんです。
 ケニアの農村に生まれたマータイさんは、勉学のチャンスに恵まれ、ナイロビ大学の先生にまでなります。しかし、乱開発が元で故郷の村の自然が荒廃し、自給自足の豊かな食生活が失われたことに危機感を抱きます。植林の有効性に気づいたマータイさんは、自宅で苗木を育てるという、文字通り手探り状態で活動を始めました。グリーンベルト運動の誕生です。
 運動はケニア国内から世界に広まり、30年近くで推定3000万本が植樹されました。この運動は自然環境の改善はもちろん、住人の健康と人権意識をも向上させました。その成果は、マータイさんが04年のノーベル平和賞を受けることにもつながりました。
 順風満帆だったとはいえないマータイさんの活動を、言語学者でもあるナポリさんはまことに簡潔にまとめています。また、アフリカ系アメリカ人画家のネルソンさんは、アフリカの民族衣装そのものに見えるプリント生地を張り合わせて各場面を印象的に構成しました。温かさと、生命力を感じます。
 作中でマータイさんは繰り返し「木を植えましょう」と言います。それが希望につながると。今の私たちの国にも切実に響く言葉です。毎年お花見のできる幸せを守り続けたいものです。

 

ドナ・ジョー・ナポリ 作 カディール・ネルソン 絵 千葉 茂樹 訳 すずき出版 1,995円
(2011年 ’平成23年’ 4月21日 165回 杉原由美子)

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