JM社 新刊本安売り 再販違反? ダンピング?

本屋の仕事、田んぼや畑の耕作、超高齢を迎えた両親との生活と毎日が忙しく、ブログのことを考えるゆとりもなく過ごしていたところ、大学の先輩Tさんが経営する、子どもの本の古本屋DさんのFacebookを見てビックリ!久しぶりの再開になりました。
そこには、「在庫のある本もお取り寄せして、特別価格で提供します。税込み価格の15~22%OFF!お買い得です!(^^)!  郵送の場合、送料不要です。ジャパンマシニスト社が負担してくれるそうです」と公開されているのです。
一般の人は、おっ!安売りイイじゃん!と当然思われるでしょうし、本屋ということでは素人であるTさんにしても、ジャパンマシニスト社さんが、7掛(後にTさんの話では、実際は6掛だったようです)で出すから後は好きな値段で売ってくださいということだったので、とご本人としては、本をできる限り安く販売して、世のため、人のためと思って疑わない。
でも、ちょっと待ってください。新刊本を、22%引きで販売するなんて、日本中の本屋さんが聞いたら、髪の毛が逆立って、先日射水市に講演に来られた落合恵子さんの怒髪のようなことになっちゃう話なのです。

事の次第はこうです。まず、ジャパンマシニスト社が発行している『ち・お』『お・は』を「読む会」というグループがありました。その方々が、『ち・お』『お・は』の展示会を、Dさんの2階ギャラリーで開催することにしたのです。そこで、会場の賃借料や資料作成の費用の捻出と本の普及のため、販売もしたいということで、ジャパンマシニスト社社に相談したところ、先のように好きな値段で販売してくださいと言われ、送料も返品送料も同社負担でよいと言われたそうです。グループの方々は、一冊でも多く、たくさんの人に読んでもらいたいと、目一杯安く値段をつけて、お買い得ですよということで、多くのお客さんにお越し願おうと考えたわけです。会場を貸しているDさんも、そういうことであればと、自らのFacebookで大大的に、新刊本の安売りを告知したという次第です。
この熱意には、とても心動かされるものがあります。うちの店でも、20年以上ずっと『ち・お』『お・は』を定期購読してくださっているお客様が何人もおいでです。カミさんが、『ちいさいおおきい よわいつよい』の創刊号を、それこそまだ怒髪ではなかった頃の落合恵子さんちの「クレヨンハウス」で見付け、あっ、こんな雑誌が創刊されたんだと思い、うちの店にも置いて、販売してきました。一人でも多くの人に、一冊でも多く、手に取ってもらいたいと思い、ちょっとでも安くすればよいのではないかと思われた、グループの方々やTさんの気持ちはよくわかります。
しかし、本屋の立場からいうと、どうもおかしいのです。このことには、2つの問題があります。

一つは、再販売価格維持制度の問題です。定価を決めて、日本中の書店に定価販売をさせている本体が、自ら進んで定価を破壊していることです。コンプライアンスの問題であり、脱法の疑いがあると思います。
新刊本は、定価販売されます。日本中の本屋さんは、定価が表示されている本はみな同じ定価で販売しています。この定価は、しかし本屋が決めているわけではありません。本の定価を決めているのは、版元である出版社です。出版社が決めた定価で、日本中の本屋さんが売らされているといえるのです。一旦、本屋が値引きでもしようものなら、たちまちすべての入荷が止まります。かつて消費税導入の折、ある児童書専門店が消費税に反対して徴収しなかったために、値引き販売とみなされて、出荷を止められ、閉店に追い込まれました。それほどまでに厳重に守ることを本屋に要求している定価販売の、その定価を決めている出版社である、今回の場合は「ジャパンマシニスト社」が、本屋以外の素人の方に、「好きな値段で販売してください」と値引き販売を推奨するというのは、どうなのでしょうか?

再販売価格維持制度については、もちろんこの点以上に価格や流通の安定、著作権の保護、などなど考えなければならない重要なことがらがたくさんあるようです。出版物は他にとってかわることのできない内容であり、つまり例えば三菱鉛筆よりトンボ鉛筆の掛けが安ければそちらを売るというようなことがないこと。制度がなくなれば、出版リスクが高くなるので、本の種類が少なくなり、本の内容が偏り、売行き予測の立てやすいベストセラーものばかりになり、値引き競争になるので見せかけの価格が高くなり、富山のような地方では東京など都市圏より本の価格が高くなり、うちのような街の弱小書店は価格競争ができず、見せかけの高値のまま本を売らされ、次々と潰れていくというような事態になることが予想されます。また、価格が自由になるということは、著者の印税も今のように定価の一割を保証する必要はなくなり、新人作家や新しい文化活動が生まれにくくなると思います。
Tさんにこのようなことを話したら、じゃあ「ジャパンマシニスト社」は真っ黒黒の再販違反の確信犯じゃない、といってくれるのですが、やっぱり安売りは、読者のためと頑固にお思いのようで、22%引きはお止めにはなりません。

二つ目の問題は、不当廉売、ダンピングです。本屋は、ご存知のように、正味(掛け率)が厳しく、小売業中利幅の少なさチャンピオンです。特に、「ジャパンマシニスト社」は、他のほとんどの出版社さんから比べても高掛け率です。広告も載せず、真摯なテーマに取り組んでおられるのだから仕方ないだろうと、この恐怖の岩波書店並み掛け率に甘んじて、20数年仕入れてきたのです。しかし、22%も値引きして販売されると、日本出版販売(うちの取次(問屋)さん)さんからの仕入れ値よりも低いのです。うちがDさんから買ってきてそれを販売すれば、日販経由より多くの利益が出るのです。あるいは、Dさんから買ってきて、それを返品すればそれだけで利ザヤが稼げることになります。これは、明らかに不当廉売、ダンピングです。「ジャパンマシニスト社」は、日本中の本屋に通常いくらで卸しているか把握しておられるはずですが、本屋以外の何も知らない素人の方に「好きな値段で販売してください」と言ってダンピング行為、法律に違反する行為をさせていることになるのではないでしょうか。
同じ仕入れ条件の商店同士であれば、ダンピングした方が、利益を失い、法的、社会的制裁を受けるリスクも背負い、良いことは何もないのが普通です。逆にダンピング商品を競合商店にダンピング価格で買い占められて、セール価格で攻撃されるということさえあります。しかし、本屋は定価販売なので、今回のように書籍の正規ルートから隠れて、闇ルートでダンピングをされると、正規の書店は打つ手がありません。毎日真面目に、正規の運営をしている書店から、いつの間にか、20年以上の定期購読者や30数年来の顧客が奪われて、理不尽にも閉店に追い込まれていくことにもなるのです。

そこで、以上の点について、「ジャパンマシニスト社」に問い合わせてみることにしました。回答を大まかに言うと、今回のような催し物の時は、「好きな値段で販売してください」ということに決めてあるとのことで、黙って目をつぶってくれと言うのです。そんなこと、うちの店に、20年以上取りに来て定価で買っていかれて、これからも買いに来てくださるお客様に向かって、「ジャパンマシニスト社」が、他では22%引きで安売りしているけど、今まで定価で買ってもらったことは「黙って目をつぶって」、今月の『ち・お』も、そしてこれからの定期分も「黙って目をつぶって」定価で買っていってください、と言えるものなら言ってみろ!と言いたいです。
これは、安売販売をするという「値引き想定の定価」も「ジャパンマシニスト社」が決めているということですよね。本屋に再販売価格維持制度で売らせる「定価」も「ジャパンマシニスト社社」が決めれば、本屋以外の方に不当廉売してもらう「ダンピング定価」も「ジャパンマシニスト社」が決めるということではないでしょうか。
やっぱり、これ、再販違反、コンプライアンス違反ですよ。ブラックですよ。やっぱり、もう一度ジャパンマシニスト社」に聞いてみます。ですから、このつづき、たぶんあります。

このように、だんだん興奮してきてしまう私に対して、日本一の本の問屋さん日本出版販売さんの対応は、やっぱり横綱でした。日販のうちの担当者に相談したら、最初はやっぱりびっくりした様子でしたが、本社の担当部所に問い合わせてもらうと「ジャパンマシニスト社にヒヤリングはしますが、そういう出版社さんは結局社会的に不審を持たれるだけだと思いますよ。みんなでちゃんと定価を守って販売しましょうってことですよ。ヒヤリングの結果は必ず報告します」という回答でした。
より豊かで、楽しい本のある生活のために、「みんなでちゃんと定価を守って販売しましょう」 だから、新刊本の値引き販売は、やっぱりやめてもらえないかなぁ。

つづく

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