本 帰る 1 『ベルリン漂泊』

 帰ってきた本たちの中で、とても楽しみにしていたのが、柏原兵三著『ベルリン漂泊』と李恢成著『砧をうつ女』です。2冊とも高校生の時に読んで、その後2、3回は再読した本です。
 『ベルリン漂泊』は、柏原兵三さんのドイツ留学時の体験をもとに書かれたものとだと思いますが、穏やかな表現で書き綴られているのが、とてもいいのです。日本から妻子を呼び寄せるため、戦後の住宅事情が悪い西ベルリンで、住まいを探し求める主人公の、焦燥感、時にはあきらめ、一方で早く家族一緒に暮らすことを待ち望む妻を思い気を取り直すなど、様々な心の起伏を坦々と書き綴っていることに、とても共感できます。
 また、登場人物もしっかり書かれていて、とくに家主のバッハマン夫人は、ケチで、神経質で、頑固で、賢く、誇り高い、確かにこういう人っていると思うし、ドイツ婦人ってこうなのかもしれないと思ったりする。そして、このバッハマン夫人と主人公の反発し合いながらも、心が通い合っていく様子がとても温かいのです。
 この私の本を、古本に登録しているカミさんも、読んでとてもいいと言います。この作品もそうだけど、『長い道』も、戦争中疎開先でイジメにあった人は、日本中にたくさんいたと思うけど、その多くの人が経験したはずのことを、坦々と文章に書き上げて、読者に感動を与えていることに感心すると言っています。
 異常性欲者でも、精神異常者でも、超能力者でもない、超現実でもない、普通の生活者の日常的な出来事から書き上げて、読む者を感動させる小説が私の高校生の頃はたくさんあったように思います。

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