総曲輪通りのS書店 その3

 K先生に日本語の発音が変だと指摘された私ですが、発音にまつわるS書店での出来事があります。
 岩波書店の全集は10年ほどを周期に出版されるのでしょうか、私が高校生のとき、次々と出版されました。志賀直哉全集は刊行終了でしたが、S書店の店頭に数冊あって、第2巻(清兵衛と瓢箪、城の崎にて など)と第5巻(暗夜行路)を購入しました。漱石全集はちょうどこれからの刊行ということで、思い切って全巻の予約をし、四苦八苦の資金調達の末、全巻揃えました。芥川龍之介全集も、漱石全集に続いて刊行になり、これもと予約を申し込んだのですが、こちらの方は資金切れで、終わりの方の配本2、3冊を購入できませんでした。
 そこで問題の鷗外全集なのですが、こちらの全集も既に刊行完了で、鷗外の作品は擬古文のものなどあって、購入するつもりはなかったのですが、「勉強チュー」先生のおススメを真に受けて、S書店に「鷗外全集の「ファウスト」を注文してください」とお願いしました。ところが届いた本は、『鷗外全集第1巻』です。「あれっ!?」と思ったのですが、とっさに何が起きたのか分からず、気が小さいのでそのまま買って来てしまいました。家に帰って袋から出して見ると、やはり第1巻はそれこそ擬古文の「舞姫」ほかで、「ファウスト」ではありません。ここでやっと、私が注文した鷗外全集の「ファウスト」を、出荷した人が鷗外の作品に「ファウスト」があることを知らなくて、困った挙句「ファウスト」を「ファースト(first)」と解釈して、第1巻を送ってきたのだと気づきました。裏見返しに「ファウストを注文したのだが、ファースト違いで1巻が来ていた。しかたないので買った。’73.8.8」と書いています。改めて注文して届いた『鷗外全集第12巻』の裏見返しには「’73.8.20 以前N先生(勉強チュー)にすすめられて」と書いていました。
 この話を大学のゼミのコンパのときに話したら(私は文学科なので女性が多いのですが)、笑いは取れたのですが、「もったいぶって発音したのではなぁい~」とか「イヤミな発音に聞こえたんじゃなぁい~」とか散々でした。

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