総曲輪通りのS書店 その1

 富山市の繁華街・総曲輪通りにある老舗S書店の本店が、10月で閉店するという記事を、北日本新聞で読みました。
 大袈裟に言うと、私は高校時代の大半をこのS書店本店の中で過ごしました。私は在郷の生まれなので、富山市内の高校に入学すると、国鉄と市内電車を乗り継いで通学していました。その途中に市内電車の停留場「西町」があって、総曲輪通りの入り口です。私は、毎日この「西町」で途中下車し、S書店に通いました。本棚を隅から隅まで、順々に見ていくのです。毎日見ていますから、どこの棚がどう変わったかも、ちゃんと分かっています。お客さんに聞かれて店員さんが困っているときなど、生意気にもお助けマンをしたことなど何回もあります。
 初めは在郷の書店にはない目新しさで、李恢成『砧をうつ女』、柴田翔『されど われらが日々』、サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』、アップダイク『走れウサギ 』などの新刊既刊の単行本や小田 実『世直しの倫理と論理』などの新刊新書を(何か懐かしい!)次々に買いました。確か390円位で、小遣いだけだと月1冊が限度なので、お年玉、親戚のおじさんたちからもらう小遣い、果ては参考書を買うと親から騙し取ったお金まで、全てS書店に注ぎ込みました。安部公房『砂の女』、原田康子『挽歌』などは単行本ではもう買えなかったけど(新潮社や講談社などの文学全集をバラで買うか文庫本で買う)、倉橋 由美子『パルタイ 』などはまだまだ単行本で買えた時期です。  庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』を新刊で買って読んだときは、(まだ高校生の分際でしたが)「あれっ!?」と思ったことを憶えています。(前述『ライ麦畑』と似ているというので話題になった)
 これだけ毎日やって来て、高校生としては異常に本を買うわけですから、当然店員さんと仲よくなります。何せ老舗書店の店員さんたちですから、本好きな人がたくさんいます。店員さんとお話していても楽しかった。特にNさんと仲良くしてもらいました。
 店頭にないものも読みたくなるので、だんだん注文するようになります。初めは自分が注文した本が来てるかなと、注文した翌日から毎日客注棚を確認するようになり、仕舞いには自分の注文の有無にかかわらず、客注棚を隅から隅まで毎日見るようになりました。これ、すごく面白かったです。よく売れる本は店頭にあるわけですから、超!通の本とか、こんなもの注文して読むか!というようなくだらねーぇ本とかもあって、上下前後左右色々という感じ、バラバラで無茶苦茶なのが面白いのです。ある日、文芸誌の別冊で作家と病気(持病)をテーマにした特集号があって、図々しくもその客注の本見せてもらえないかと店員さんに言ったことがあります。「えっ!」と言って、店員さん同士で顔を見合わせてから、なんと!「丁寧に見てくださいよ」と見せてくれました。ところがその本なかなか面白くて、レジの横でずっと読み込んでしまい、「この本今から注文しても手に入るかなぁ」って聞くと(要するに雑誌扱いなのです。高校生に書籍流通のことは分かりませんが、別冊などその手のものは注文しても入らないことが多いと分かっていたのです)、店員さんがNさんのところに聞きに行きます。「Nさん、譲って良いって」と返事。えっ!超本好き店員Nさんの注文本だったのか。さすがの私も辞退しましたが、Nさんが強く進めてくれるので、有難く買わせてもらったことがありました。
 (仕事に追われて、なかなか書けないでいたら10月になってしまいました。ここで一旦載せて、次に私がS書店本店へ行くことになったいきさつ、岩波書店の値上げに反対して不売で抗議した先代の書店気質など憶えていることを書きます) 

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